整形外科医が語る靴の話

整形外科医が語る靴の話

整形外科医が語る「靴選びのコツ」

通勤時にはいている靴のかかとを見てください。前後左右に偏ってすり減っているならば、それは重心が偏った歩き方をしている証拠。腰椎は骨盤の上にのり、その骨盤は足で支えられているので、そんな歩き方をすれば、骨盤がゆがみ、腰椎にも影響します。(ただし、軽度に外側がすり減ってくるのは正常)。

女性はよく、かかとが折れそうなほど細くて高いハイヒールをはいていますが、こうした靴も腰痛の原因になります。かかとが持ち上がれば、おのずと下腹を前に突き出す姿勢になりますが、そのままだとそり返ってしまうので、胸から上はやや猫背になってバランスをとっています。

この姿勢をスウェイバック(凹円背)といい、腰痛持ちの人には非常に多い姿勢です。デスクワークなどからくる腰痛を解消するのに、歩くことはたいへんよい方法ですが、靴しだいではかえって腰痛を悪化させることになります。そこで、腰痛を防ぐ靴選びのチェックポイントをあげておきましょう。

腰痛を防ぐ靴選び「10のチェックポイント」

    腰痛を防ぐ靴選びイメージ
  • 靴を床に置いた時、着地面積が広く安定している。
  • ヒールがかかとの中心につき、左右のバランスがよい。
  • 縫製や接着がていねいにできている。
  • 靴に手を入れてみて、靴底に凹凸やシワがない。
  • 靴の先をたわめたとき、弾力が適度で、かたすぎない。
  • ヒールの高さは3cm前後がいちばん疲れない。
  • 靴の折れ曲がる部分が足の趾のつけ根の位置にくる。
  • 足の甲がきつすぎたり、ひもが当たったりしない。
  • くるぶしに当たらない程度に、靴底が深い。
  • 靴底に適度なクッションがある。

尚、人間の足は左右でサイズが微妙に異なるので、必ず両足ともはいて、はき心地を確かめるのがじょうずな靴選びのコツです。また、朝よりも夕方のほうが足はむくんで大きくなるので、午前中に靴を買うときは、多少ゆとりのあるものを選んで下さい。

整形外科医が答える靴のQ&A

「外反母趾でしょうか?」

質問 仕事柄ハイヒールを1日中履いています。最近、長時間歩くと左足の親指の裏が非常に痛くて困っています。少し前から痛むようになり、最近は靴を履かなくても、痛みます。横から見ても触っても骨が出てるような風には見えないのですが、触ると痛みがあります。足の裏からも、側面からも痛みがあります。やはり外反母趾になりかけているのでしょうか?
答え

外反母趾は趾の母趾が外側に曲がっていると言うことですから、母趾が痛んでも曲がっていなければ外反母趾とは診断しません。母趾の付け根の関節の裏側が痛むのなら、靴底が硬すぎたり薄すぎたしたための、種子骨障害が考えられます。内側面ならば、靴の横幅がきつすぎるための滑液嚢炎が考えられます。いずれにしても、この状況を続けていると、母趾が曲がって外反母趾になる可能性が強いので、ハイヒールの高さと履く時間を少しでも短くして、外反母趾にならないようにして下さい。靴を履かなくても痛いようなら、帰宅後、足浴か風呂に入り、局所に鎮痛消炎剤入りのクリームを付けてマッサージするのが良いでしょう。

足の裏に違和感があります。

質問 随分前から外反母趾で悩んでますが、2・3日前に素足で歩いたら足の裏に違和感を感じました。足の裏、人差し指?の付け根2~3cmほど下の骨が飛び出して来たような違和感を感じるのです。今はまだ「痛くて歩けない」と言う状態ではありませんが、歩けなくなるのではないかととても心配です。昨日から矯正パットを指の間に挟んでいますが、どうしたらよいでしょうか?
答え

足には縦アーチ(土踏まず)と横アーチ(前から見て2、3趾が上がっている)があります。外反母趾が進むと、この横アーチが低下し、2、3趾のつけ根の関節の骨(中足骨骨頭)が直接、床や地面、靴底に当たるようになります。ひどくなると胼胝(たこ)が出来て硬くなり痛みます(中足骨骨頭部痛、有痛性胼胝)。2趾のつけ根の違和感は、このはじまりです。胼胝ができ硬くなるとひどくなるので、柔らかい内に入浴しながら軽石などで薄くして下さい。趾の間に挟む矯正パッドは無効です。中足部パッドと言って2、3趾のつけ根の出っ張りより少し中枢の足底につけるパッドと土踏まずを支えるアーチサポートが有効です。ただ、普通の靴に、むやみにパッドやアーチサポートを入れると、上下がきつすぎてかえって悪くなるので注意して下さい。違和感を感じる程度でしたら、柔らかい、厚めの中敷きを、まず試してみましょう。

立ち仕事

質問 立ち仕事をはじめてから、親指の付け根が出っ張りだし、痛みがあります。仕事上、ヒールのある靴をはかないわけには行かず、悩んでいます。また、小指が横に曲がってしまいました。根本的な治療はあるのでしょうか。また合う靴の見つけ方もわかりません。
答え

外反母趾と内反小趾です。どうしても3cm以上のハイヒールが必要なら、踵の部分が水平で、足が前に滑らない靴を探しましょう。そして、どうしてもと言うとき以外、ハイヒールは止めましょう。

足全体の調子が悪い

質問 最近特に、左足の親指が曲がってきて親指を動かすと、少し違和感を感じます。また、踵の上あたりが靴にあたって痛んだりするなど、左足全体の調子が悪いような気がします。それに、巻き爪にもなりやすいです。
答え

外反母趾とバンプ・パンプ(アキレス腱と靴の踵の縁がこすれて胼胝状に皮膚が厚くなり痛む)のはじまりでしょう。今なら、靴の注意で間に合うと思います。巻爪の事も考えると、靴の長さが足りないようです。踵の縁が当たるようなら買った店で広げてもらいましょう。

左右で差がある足の形

質問 娘(10歳)のことですが、足が靴に当たって痛いと言うので、見たところ右足親指の根元は外に出っ張っており、爪先は内側に20度ぐらい曲がっておりました。(左足はそれ程目立った曲がりはありません。)かかりつけの医者に相談したところ、一度整形外科に見せた方が良いといわれました。
答え

左右が明らかに違っている場合には、異常なことが多いので、整形外科で両側のX線写真を撮って比較してもらいましょう。こどもの普通の運動靴であれば、出っ張っていて靴に当たるより、靴が小さすぎて当たり、炎症を起こして腫れて出っ張ることの方が多いようです。

 

当院では、「日本靴医学会」に所属する院長が、
専門家の見地から皆様の靴選びについてアドバイスを行っております。

ご自身の足に合った「ピッタリの靴が欲しい」とお考えの方は、どうぞお気軽にご相談下さい。